ベトナム人の姓は、国民の4割がNguyễn(グエン)阮さん。
あっちもこっちもグエンさんなので、ベトナムで人を呼ぶときは、姓ではなく、名前(ファーストネーム)で呼ぶ。
ところが、名前の方もパターンがそこまで多くない。
職場では、同じファーストネームの人が4組いる。
※ベトナム語を全然話せない日本人が、周りのベトナム人から聞いた話を元に書いています。ベトナム語の発音はカタカタ読みで正確ではありません。
- ベトナム人(キン族)の名前の構成
- 【先頭】ベトナム人の名字(姓)の読み方と漢字
- 【2語目】ベトナム人の テンデム(Tên đệm)の読み方と漢字
- 【末尾】ベトナム人の名前の読み方と漢字(男性、女性)
- 体験談~短い音&似ているように聞こえる名前
- 体験談~ベトナムで名前がかぶったときの呼び分け方
- おまけ~人称代名詞とAnhさん
ベトナム人(キン族)の名前の構成
ベトナム人(キン族)の名前は、日本人と同じように、姓が先で名が後。ただし、姓と名の間に、テンデムとミドルネームが入る。
テンデムやミドルネームは、両方ある人もいれば、一方のみある人もいる。
テンデムは、○○太郎、○○子的なものらしく、最近は付けない場合も多いとか。
付いていると、外国人的には、男女がわかりやすくて助かるんだけど(^^;)
【先頭】ベトナム人の名字(姓)の読み方と漢字
ベトナム人に多い名字は、以下の14個。
なかでも、Nguyễnが約4割。TrầnとLêとPhạmが約1割ずつ。
これだけで、全体の約7割!
- Nguyễn(グエン)阮
- Trần(チャン)陳
- Lê(レー)黎
- Phạm(ファム)范
- Hoàng/Huỳnh(ホアン/フイン)黄
- Phan(ファン)潘
- Vũ/Võ(ヴー/ヴォー)武
- Đặng(ダン)鄧
- Bùi(ブイ)裴
- Đỗ(ドー)杜
- Hồ(ホー)胡
- Ngô(ゴー)呉
- Dương(ズオン)楊
- Lý(リー)李
王朝が変わったときには反体制と思われないよう、新たな王朝の姓に変える人がいたのではと考えられている。
というわけで、ベトナム最後の王朝の名、Nguyễn(グエン)阮さんが多いとか。
ベトナム人は結婚しても姓は変えない、夫婦別性。一般的には父方の姓を受け継ぐ。
父方の姓の後に、母方の姓を入れることがあるけれど、その場合2つ目の姓はミドルネーム扱いになる。
【2語目】ベトナム人の テンデム(Tên đệm)の読み方と漢字
名字の次に付けるテンデムは、男女で決まっている。
- 男性:Văn(ヴァン)文
- 女性:Thị(ティ)氏
名前の2語目に、Vănがあれば男性、Thịがあれば女性。
ベトナム人の名前は、外国人から見て男女がわかりにくいけど、テンデムがあればすぐにわかる。
けれど、テンデムは最近は付けない場合も多い。
【末尾】ベトナム人の名前の読み方と漢字(男性、女性)
ベトナムでは今は漢字は使われていないけれど、ベトナム語は漢字由来の漢越語が約7割。
名前にも漢越語が多く使われている。
名前(ミドルネーム、ファーストネーム)の漢字を調べてみると、男女のイメージは対照的。
そして、日本人が男女の名前に込める願いと大きくは変わらない。
男性には強さや大きさを願う名前が多く、自然なら「日」や「山」。
女性には賢さや美しさを願う名前が多く、自然なら「月」や「河」。
男性、女性の両方に使われる名前も多い。



以下、ベトナム人の具体的な名前の一部と、それぞれの読み方と漢字を挙げてみる。
男性に多い名前
- An(アン)安
- Bình(ビン)平
- Công(コン)公
- Cương(クオン)剛
- Cường(クオン)強
- Dũng(ズン)勇
- Đức(ドゥック)徳
- Hiếu(ヒェウ)孝
- Hoàng(ホアン)黄/皇
- Hùng(フン)雄
- Khang(カン)康
- Long(ロン)龍
- Minh(ミン)明
- Nam(ナム)南
- Nhật(ニャッ)日
- Phong(フォン)風/豊
- Phúc(フック)福
- Quang(クアン)光
- Sơn(ソン)山
- Thắng(タン)勝
- Thành(タイン/タン)成
- Thế(テー)世
- Tiến(ティエン)進
- Trí(チー)知/智
- Trung(チュン)忠
- Tú(トゥー)秀
- Tuân(トゥアン)俊
- Tưởng(トゥオン)奨
女性に多い名前
- Duyên(ジュエン)縁
- Giang(ザン)江
- Hà(ハー)河
- Hạ(ハー)夏
- Hằng(ハン)姮
- Hạnh(ハイン/ハン)幸
- Hiền(ヒエン)賢
- Họa(ホア)花/華
- Huệ(フエ)恵
- Hương(フオン)香
- Huyền(フエン)玄
- Lan(ラン)蘭
- Liên(リエン)蓮
- Linh(リン)鈴
- Lý(リー)理
- Mỹ(ミー)美
- Nga(ガー)娥
- Ngân(ガン)銀
- Nguyệt(グゥエット)月
- Nhi(ニー)児
- Phượng(フオン) 鳳
- Thảo(タオ)草
- Thoa(トア)釵
- Thu(トゥー)秋
- Thúy(トゥイ)翠
- Thùy(トゥイ)垂
- Thủy(トゥイ)水
- Xuân(スアン)春
男性、女性どちらもある名前
- Anh(アイン/アン)英
- Dương(ズオン)陽
- Khánh(カイン/カン)慶
- Kim(キム)金
- Ngọc(ゴック)玉
- Nhã(ニャー)雅
- Phương(フオン)方/芳
- Thanh(タイン/タン)青/清
男女はあくまで目安だけど、ミドルネーム+ファーストネームの両方の漢字を調べると、わかりやすいかも。
例えば、同じファーストネームLinh(リン)さんでも、Nhật Linh「日鈴」なら男性、Mỹ Linh「美鈴」なら女性だろう。
体験談~短い音&似ているように聞こえる名前
冒頭に書いたとおり、国民の4割は姓がグエンさん。
うちの職場は5割だ…。
ベトナムでは、姓ではなく、名前(ファーストネーム)で人を呼ぶ。
ところが、名前の方もパターンがそこまで多くない。
そして、とても短い。
Nga(ガー)とかHa(ハー)とかカタカナで書いた時に短っ?!ってなるけど...
一見長く見える、Duong(ズォン)とか、Thanh(タイン)とかでも、実はすべて一音節らしい。
カン、コン、クォンとか、短い音節の割にはバラエティ豊か。
(というか、外国人からすると似ている名前が多くて難しい…。)
だけど、当然、同じグループ内で、同じ名前の人がけっこう出てくる。
うちの職場では、同じファーストネームの人が4組いる。
日本の学校で例えるなら、佐藤さん2人、鈴木さん2人、田中さん2人、加藤さん2人が同じ一つのクラスにいる感じ。(比率的にはもっとか...)
しかも、日本なら下の名前で区別するところだが、ここベトナムでは、グエンさんと苗字を付けても、区別できない。
かと言って、ミドルネームとファーストネームをセットで呼ぶこともしない。
(ファーストネームAnhさんは例外)
そんなとき、どうやって呼び分けるのか、聞いてみた。
体験談~ベトナムで名前がかぶったときの呼び分け方
呼びわけ方その1
「AとかBとか付けます。」
こんなシーンしか浮かばない。
学校のクラスとかだとよくやるみたいだけど。
それって、クラスが変わったら、去年のBが、今年のAとかになったりするの???
みんなは何とも思わないのかもしれないけど、記号を付けて呼ぶのは、職場では抵抗があるな。
他の方法でお願いします...。
呼び分け方その2
「友人同士だと、大きい、小さいとか付けたりもしますね。」
A、Bでなければ、身体的な特徴(マイルドに言えば、大きい、小さい、ふくよか、スマートとか)を付けたりして、呼び分けることもあるようだ。



まあ、日本でも、本人に向かってじゃなければ、「メガネの方」とか、言ってたりするけどさ(^^;)。
職場では、よほど気安い仲じゃないとビミョーだよね…。
うーん、もうちょっと気兼ねなく呼べるのないの?
呼び分け方その3
「Anh(アイン-兄さん)やChi(チ-姉さん)を名前の後に付けます。」
これ↓を名前の後ろに付けて、
こうやって↓、最大3人(!)までいけるらしい。
じゃあ、それで!
年上/年下を重視する、ベトナムっぽいね。
初対面の自己紹介で、生年月日確認して、数か月違いでも、
どっちがAnh/Chiで、どっちがEm
とか決めてるのをよく見る。
(英語で言うIとYouも、相手との年齢差で上の人称代名詞を使い分けるので、お互いの年齢差がわからないと会話が始められないらしい…。)
職場では名前かぶりが2人ずつだったので、ひとまず解決。
3人以上かぶってしまった日には、その時に考えよう...。
おまけ~人称代名詞とAnhさん
ちなみに、普通に「○○さん」と言いたいときは、名前の前に人称代名詞を付ける。
ファーストネームAnh(アイン)さんが、ミドルネーム+ファーストネームで呼ばれるのは、名前が人称代名詞のAnhと同じだから。
女性のアインさんに、「Chị Anh」と呼ぶと、
Chị(姉さん)なの?Anh(兄さん)なの?
ってなるからとのこと。
例えば、「Chị Lan Anh」(ランアインさん)のように呼ばれる。
(Anhはど定番の名前で、女性に多い気がするが、男性もいる。)
ベトナム人の名前は日本人にとって音が難しいけど、漢字の意味などをふまえて、周りの人の名前を覚えたい。