【2024/9月 改稿、2020/3/9 初出】
日本に住むベトナム人も多い、昨今。
周りのベトナム人の名前の読み方やどう呼べばいいのか、知りたい人も多いだろう。
ベトナム人の姓は、国民の4割がNguyễn(グエン)阮さん。
あっちもこっちもグエンさんなので、ベトナムで人を呼ぶときは姓ではなく名前(姓名の一番最後の語)で呼ぶ。
- ベトナム人(キン族)の姓名の構成
- 【先頭】ベトナム人の名字(姓)の読み方と漢字
- 【真ん中】ベトナム人の テンデム(Tên đệm)の読み方と漢字
- 【末尾】ベトナム人の名前の読み方と漢字(男性、女性)
- 応用編:同じ名前の人が何人もいるときは?
- 応用編:人称代名詞とAnhさん
ベトナム人(キン族)の姓名の構成
ベトナム人(キン族)の名前は、三語または四語で構成される場合が多い。
そして、ベトナム人の名前は、日本人と同じように姓が先で名が後。
ただし、姓と名の間にテンデムとミドルネームが入る。
構成と並び順は、姓・(テンデム)・(ミドルネーム)・ファーストネーム。
例えば、Nguyễn Thị Hương Liênさんなら、一番最後のLiên(リエン)がファーストネーム。
ベトナム人の名前を呼ぶときは、この最後の語で呼ぶ。
一番最初のNguyễn(グエン)が姓。
二語目のThị(ティ)は女性のテンデム。(男性のテンデムはVăn(ヴァン))
ファーストネームの前の語のHương(フオン)はミドルネームの扱いになる。
テンデムやミドルネームは、両方ある人もいれば一方のみある人もいる。
テンデムは、○○太郎、○○子的なものらしく、最近は付けない場合も多いとか。
付いていると、外国人的には男女がわかりやすくて助かるんだけど(^^;)
以下、姓、テンデム、名前について、よくあるものと読み方や漢字を個別に書いていく。
【先頭】ベトナム人の名字(姓)の読み方と漢字
ベトナム人に多い名字は、以下の14個。
なかでも、Nguyễnが約4割。TrầnとLêとPhạmが約1割ずつ。
これだけで、全体の約7割!
- Nguyễn(グエン)阮
- Trần(チャン)陳
- Lê(レー)黎
- Phạm(ファム)范
- Hoàng/Huỳnh(ホアン/フイン)黄
- Phan(ファン)潘
- Vũ/Võ(ヴー/ヴォー)武
- Đặng(ダン)鄧
- Bùi(ブイ)裴
- Đỗ(ドー)杜
- Hồ(ホー)胡
- Ngô(ゴー)呉
- Dương(ズオン)楊
- Lý(リー)李
王朝が変わったときには反体制と思われないよう、新たな王朝の姓に変える人がいたのではと考えられている。
というわけで、ベトナム最後の王朝の名、Nguyễn(グエン)阮さんが多いとか。
ベトナム人は結婚しても姓は変えない、夫婦別姓。一般的には父方の姓を受け継ぐ。
父方の姓の後に母方の姓を入れることがあるけれど、その場合2つ目の姓はミドルネーム扱いになる。
【真ん中】ベトナム人の テンデム(Tên đệm)の読み方と漢字
名字の次に付けるテンデムはこちら。
- 男性:Văn(ヴァン)文
- 女性:Thị(ティ)氏
姓のあと(名前の2語目など)に、Vănがあれば男性、Thịがあれば女性。
ベトナム人の名前は外国人から見て男女がわかりにくいけど、テンデムがあればすぐにわかる。
けれど、テンデムは最近は付けない場合も多い。
【末尾】ベトナム人の名前の読み方と漢字(男性、女性)
ベトナムでは今は漢字は使われていないけれど、ベトナム語は漢字由来の漢越語が約7割。
名前にも漢越語が多く使われている。
名前(ミドルネーム、ファーストネーム)の漢字を調べてみると、男女のイメージは対照的。
そして、日本人が男女の名前に込める願いと大きくは変わらない。
男性には強さや大きさを願う名前が多く、自然なら「日」や「山」。
女性には賢さや美しさを願う名前が多く、自然なら「月」や「河」。
男性、女性の両方に使われる名前も多い。
以下、ベトナム人の具体的な名前の一部とそれぞれの読み方と漢字を挙げてみる。
男性に多い名前
- An(アン)安
- Bình(ビン)平
- Công(コン)公
- Cương(クオン)剛
- Cường(クオン)強
- Dũng(ズン/ユン)勇
- Đức(ドゥック)徳
- Hải(ハイ)海
- Hiếu(ヒェウ)孝
- Hoàng(ホアン)黄/皇
- Hùng(フン)雄
- Khang(カン)康
- Long(ロン)龍
- Minh(ミン)明
- Nam(ナム)南
- Nhật(ニャッ)日
- Phong(フォン)風/豊
- Phúc(フック)福
- Quang(クアン)光
- Sơn(ソン)山
- Thắng(タン)勝
- Thành(タイン/タン)成
- Thế(テー)世
- Tiến(ティエン)進
- Trí(チー)知/智
- Trung(チュン)忠
- Tú(トゥー)秀
- Tuân(トゥアン)俊
- Tưởng(トゥオン)奨
※併記したものは、北部の読み方/南部の読み方。
女性に多い名前
- Duyên(ジュエン/ユエン)縁
- Giang(ザン)江
- Hà(ハー)河
- Hạ(ハー)夏
- Hằng(ハン)姮
- Hạnh(ハイン/ハン)幸
- Hiền(ヒエン)賢
- Họa(ホア)花/華
- Huệ(フエ)恵
- Hương(フオン)香
- Huyền(フエン)玄
- Lan(ラン)蘭
- Liên(リエン)蓮
- Linh(リン)鈴
- Lý(リー)理
- Mai(マイ)梅
- Mỹ(ミー)美
- Nga(ガー)娥
- Ngân(ガン)銀
- Nguyệt(グゥエット)月
- Nhi(ニー)児
- Phượng(フオン) 鳳
- Thảo(タオ)草
- Thoa(トア)釵
- Thu(トゥー)秋
- Thúy(トゥイ)翠
- Thùy(トゥイ)垂
- Thủy(トゥイ)水
- Xuân(スアン)春
※併記したものは、北部の読み方/南部の読み方。
男性、女性どちらもある名前
- Anh(アイン/アン)英
- Dương(ズオン/ユオン)陽
- Khánh(カイン/カン)慶
- Kim(キム)金
- Ngọc(ゴック)玉
- Nhã(ニャー)雅
- Phương(フオン)方/芳
- Thanh(タイン/タン)青/清
※併記したものは、北部の読み方/南部の読み方。
男女はあくまで目安だけど、ミドルネーム+ファーストネームの両方の漢字を調べるとわかりやすいかも。
例えば、同じファーストネームLinh(リン)さんでも、Nhật Linh「日鈴」なら男性、Mỹ Linh「美鈴」なら女性だろう。
応用編:同じ名前の人が何人もいるときは?
冒頭に書いたとおり、国民の4割は姓がグエンさん。
ベトナムでは、姓ではなく名前(一番最後の語)で人を呼ぶ。
ところが、年代や地域による流行りがあるのか、同じグループ内で名前がかぶる...。
うちの職場では、同じファーストネームの人が4組いる。
日本の学校で例えるなら、佐藤さん2人、鈴木さん2人、田中さん2人、加藤さん2人が同じ一つのクラスにいる感じ。(比率的にはもっとか...)
しかも、日本なら下の名前で区別するところだが、ここベトナムではグエンさんと苗字を付けても区別できない。
かと言って、ミドルネームとファーストネームをセットで呼ぶこともしない。
(ファーストネームAnhさんは例外)
そんなとき、どうやって呼び分けるのか周りのベトナム人に聞いてみた。
呼びわけ方その1
「AとかBとか付けます。」
こんなシーンしか浮かばない。
学校のクラスとかだとよくやるみたいだけど。
それって、クラスが変わったら、去年のBが今年のAとかになったりするの???
みんなは何とも思わないのかもしれないけど、記号を付けて呼ぶのは職場では抵抗があるな。
他の方法でお願いします...。
呼び分け方その2
「友人同士だと、大きい、小さいとか付けたりもしますね。」
A、Bでなければ、身体的な特徴(マイルドに言えば、大きい、小さい、ふくよか、スマートとか)を付けたりして、呼び分けることもあるようだ。
まあ、日本でも、本人に向かってじゃなければ、「メガネの方」とか言ってたりするけどさ(^^;)。
職場では、よほど気安い仲じゃないとビミョーだよね…。
うーん、もうちょっと気兼ねなく呼べるのないの?
呼び分け方その3
「Anh(アイン-兄さん)やChi(チ-姉さん)を名前の後に付けます。」
↓人称代名詞のanh(アイン - 兄さん)、chị(チ - 姉さん)、em(エム - 弟妹くらいの年下)を、名前の後ろに付けて 呼び分けるとのこと。
例えば、Lan(ラン)さんが3人いたら、グループ内の年上から順に、Lan Chị(ラン チー)、Lan Em(ラン エム)、Lan(ラン)と呼び分け。
これで↓、最大3人(!)までいけるらしい。
じゃあ、それで!
年上/年下を重視するベトナムっぽいね。
初対面の自己紹介で生年月日確認して、数か月違いでも、
どっちがAnh/Chiで、どっちがEm
とか決めてるのをよく見る。
(英語で言うIとYouも、相手との年齢差で上の人称代名詞を使い分けるので、お互いの年齢差がわからないと会話が始められない…。)
職場では名前かぶりが2人ずつだったので、ひとまず解決。
3人以上かぶってしまった日には、その時に考えよう...。
応用編:人称代名詞とAnhさん
ちなみに、普通に「○○さん」と言いたいときは、名前の前に人称代名詞を付ける。
ファーストネームAnh(アイン)さんは、ミドルネーム+ファーストネームで呼ばれる。
なぜなら、名前が人称代名詞のAnhと同じだから。
女性のアインさんに、「Chị Anh」と呼ぶと...
Chị(姉さん)なの? Anh(兄さん)なの?
ってなるからとのこと。
例えば、「Chị Lan Anh」(チ ランアイン - ランアインさん)のように呼ばれる。
(Anhはど定番の名前で、女性に多い気がするが、男性もいる。)
ベトナム人の名前は日本人にとって音が難しいけど、漢字の意味などをふまえて、周りの人の名前を覚えたい。